世界に破壊的変化をもたらし始めた「デジタル」

 
〜時代は“Default is Digital”


すべての業界、とりわけIT業界に大きな変革をもたらしている「デジタル」は、今やビジネスに欠かせない「デフォルト」として認知されつつあります。タタコンサルタンシーサービシズ(TCS)のトップであるナタラジャン チャンドラセカランが、グローバルの最先端で起きている“Default is Digital”というビジネス界の大きな流れについて、TCSが手掛ける最新事例を交えて解説します。

デジタル化の波があらゆる業界を覆いつつある

歴史を振り返ってみると、技術革新のたびに人と人とのつながりが増大し、大きな経済成長がもたらされてきました。蒸気機関の発明によって、世界のGDPは11.5倍に増加しました。同時代の人口が2倍の増加率だったことに比べれば著しい成長と言えます。続く1927年から85年間には電力という起爆剤のおかげでGDPは37.5倍にもなりました(人口増加比率は3.5倍)。そして、2012年からの36年間では、人口が70億人から90億人に増えると想定される一方で、技術革新によって500億のデバイスが接続される時代がくると予測されています。この膨大なデバイス網は急速に進化し、企業への俊敏性の向上をはじめ、大きな経済成長をもたらすと期待されています。

このデバイスの接続を後押ししている技術革新が「デジタル」です。この新しい技術が波及すれば、いかなる業界でも破壊的変化、つまりはイノベーションが推し進められるでしょう。その変化はすでに多くの業界で進行しています。

実際に、TCSでは世界中の優れた企業とパートナーシップを結び、デジタル時代における企業の変革をご支援しています。デジタルをビジネスに生かすには、業界を問わず共通する三つのポイントがあります。

一つ目がカスタマーエクスペリエンスです。私どもは、これまで商品やサービスにどんな機能が必要なのか、どんな特徴を持たせるべきかを検討してきました。しかし、世界は変化しつつあります。機能が優れていたり、特徴が明確であれば十分というものでなく、その商品によってどんなエクスペリエンス(体験)ができるのかが重要になっています。実際に市場では、消費者が最も重視するのはエクスペリエンスだという傾向が表れています。どんなに機能が優れていても、五感や感情、知性などに訴え掛けてくる優れたエクスペリエンスがなければお客様は商品に目をとめないでしょう。個人一人ひとりに寄り添ったハイパー・パーソナライゼーションのサービスが求められています。

二つ目がリアルタイムなデータです。IoT(Internet of Things)のような技術を活用することで、リアルタイムに膨大なデータを収集することが可能になりました。人間から、システムから、センサーから、多様なデータをリアルタイムで収集し、分析し、そこから顧客が求めるインサイトを見いだせるようになります。さらに、機械学習やニューラルネットワークといった技術を組み合わせれば、インサイトに自動的に対応する環境も実現するでしょう。いわばリアルタイムエンタープライズにより、いつでも、どこでも顧客にサービスを提供できるのです。

そして、三つ目の要素がデジカルです。この目新しい単語には、デジタルとフィジカル(実物)を結ぶという意味があります。事業を発展させていくとき、今までのように物理的な資産投資だけでは限界があります。しかし、インテリジェントなインターフェースを組み合わせることで、物理的な投資だけでは不可能だった効率や稼働率の向上が実現できるのです。

このように、顧客とエクスペリエンス、人間とシステム、センサーとネットワーク、デジタルとフィジカルといった、あらゆるものがデジタル技術で接続されていきます。企業もまた資産とデジタルのひも付けに挑戦し、成功することで、企業はより強みを生かしてビジネスモデルを効率化するとともに、俊敏性を獲得し、さらなる成長を期待できるでしょう。


デジタルの活用が店舗を日々変化させ、差別化を実現する

実際に、デジタルを活用したTCSのサポート事例として、米国の大手小売業の取り組みをご紹介しましょう。

周知の通り、小売業の一般的なビジネスモデルは、サプライチェーン全体を最適化し、魅力的な商品をより安価にエンドユーザーに届けるというものです。しかし、現在、小売業の顧客が求めていることは単に安価な商品ではなく、エクスペリエンスです。小売業全体が、価格に加え、顧客や競合他社を分析し、顧客ごとのニーズに対応できる、より柔軟な小売業への転換が求められています。

米国大手小売業の事例では、TCSはインテリジェンス・レジプラットフォームを構築しました。このプラットフォームでは、レジを基点に、お客様の行動や購買の情報を収集しています。お客様が週に何回来店するのか、来店ごとの購買パターンはどんなものかなどです。例えば給料日の直後であれば相応に購入総額は増えるでしょう。朝8時の来店なら仕事前のコーヒーを1杯購入するかもしれません。

加えて、競合する実店舗やウェブショップの価格情報、他店舗や倉庫にある在庫の変動など多様な情報も収集することで、プラットフォームは小売業が打つべき手は何かを分析します。製品のプロモーションをするにしても、それは何日ないし何曜日の何時に行い、ターゲットは誰か、価格をどう設定するかを決めなければなりません。TCSのプラットフォームにより、個人の購買パターンに応じたエクスペリエンスの提供はもちろん、顧客に合わせた品ぞろえの最適化、地域のイベントなど周辺環境に合わせた価格設定が可能になり、店舗は日々柔軟でダイナミックな変化を遂げています。

このようにデジタル技術を活用してデータを収集・分析し、活用することが差別化につながります。TCSは小売業だけでなく、金融業や製造業など多様な業界で企業ITのデジタル化を支援してきました。


企業のデジタル化を支援するためにTCSはどう取り組むのか

これまでご紹介した事例のようにデジタルを活用したい企業にとって、最も重要となるのはITインフラの最適化です。インフラがすべての土台となります。多くの企業が使い続けてきたレガシーなアプリケーション、利用が拡大しているパブリックなクラウド、そしてオンプレミスなクラウドを、どのように活用するのか。すべてをクラウド化する必要はありませんが、すべてがクラウドとつながって利用できるようにしなければなりません。これらをシームレスに利用できるような統合の仕方もまた重要なポイントなのです。

また、ビジネスの俊敏性を獲得する上で、自動化を促進できるツールの利用も欠かせません。自動化が進めば、市場にスピーディーに反応し、時機を捉えた商品を開発することも今まで以上に容易になります。

こうしたデジタルを積極的に取り込もうとする企業を支援するために、TCSは四つの分野に注力しています。

第一に力を入れているのが人材育成です。TCSでは、世界中で利用できるデジタル学習環境を整備しています。世界最高水準と言える厳選されたコンテンツに加え、コンテンツごとのガイドや、習熟スピードや理解度の向上をサポートするバーチャルコーチなどの豊富な機能を備えています。オフィスはもちろん、自宅や外出先、モバイル端末などからオンデマンドに利用可能です。

例えば社員が小売業のデジタル技術について研修したいなら、そのニーズや目指す方向性に合わせて70のコースを用意しています。この環境を活用して、2016年3月までにグローバルで10万人の社員がデジタル研修により技術に習熟する予定です。すでに7万人以上の社員が受講していますが、今後はすべての社員がデジタルコンテンツにより能力開発することを目標としています。

また、アジャイルの促進にも注力しています。お客様にもすべてのビジネス、すべてのプロジェクトにアジャイルの開発手法を導入することを提案したいと考えています。そのために、TCSでは社員への研修はもちろん、業務をアジャイル中心とした仕組みに切り替えて、社員の習熟を促進しています。

TCSの強みである技術による、独自の製品およびプラットフォームもまた注力分野の一つです。業種・業界ごとに、当社の豊富な支援実績・知見を生かしたクラウドベースの多様な製品があります。テクノロジーという切り口で言えばデジタルの最新技術を取り込んだシステムやサービスを次々に展開しています。2015年に公開した「ignio」は、人間の神経系のように働くニューラルオートメーションシステムです。常時、企業の情報を収集し、考え、行動に移すという神経系のような能力を備えており、利用企業にはIT運用における俊敏性の向上をもたらしたり、業務リスクを軽減するなど、エンタープライズITの変革に大きな効果を発揮しています。

プラットフォームでは、TCSコネクティッドユニバースプラットフォームという新製品の提供をしています。これはTCSがインドにある115の施設に設置している6,000ものセンサーから得られるデータを集積・分析し、さらなる効率化を図るために活用しているものです。エネルギーが施設のどこで、どのように消費されているか、その消費パターンなどのデータをリアルタイムに閲覧できるダッシュボード機能も備えて最適化を図っています。この他にもグローバルな大手企業と連携して、IoTなどを活用した先進的なプラットフォームを構築してきました。

最後に、ご紹介したい注力分野が日本です。TCSは日本向けに幾つかのイニシアティブを発揮してきました。すでに日本には強力な人材をそろえていますが、さらにインドのデリバリーセンター「Japan-centric Delivery Center」とつなげて、世界中で展開しているグローバルネットワークデリバリーモデル(GNDM)を日本向けに磨き上げ、人材を多数養成することで、日本の強みを生かしながらTCSの持つグローバルケイパビリティを提供できる体制を構築しています。これは他国ではなかった特別なアプローチです。その他にも、クラウドやビッグデータの概念実証環境や自動化への取り組みなど、日本のお客様のニーズに応えられるよう注力してきました。

繰り返しとなりますが、世界は今、大きくデジタル化しています。企業には、デジタルインターフェースを物理的な資産と組み合わせ、まったく違ったバリューチェーンやビジネスに変革できるチャンスが目の前にあります。日本の企業の皆さんにはぜひデジタルを活用して変革を実現していただきたいと思います。TCSおよび日本TCSはその挑戦を、グローバルで蓄積している実績と知見を最大限に活用して、支援させていただきます。




タタコンサルタンシーサービシズ 代表取締役社長兼CEO
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社 取締役会議長
ナタラジャン チャンドラセカラン(チャンドラ)

2007年よりCOOを務めた後、2009年10月よりタタコンサルタンシーサービシズ 代表取締役社長兼CEO。2015~16年にダボスで開催される世界経済フォーラムにおけるIT産業の議長を務める。インド政府による貿易拡大や多国間との関係強化の取り組みにも積極的に参画しており、日本などの国々とのビジネスタスクフォースの一員。Institutional Investor's 2015 Annual All-Asia Executive Team Rankingsより「Best CEO」を5年連続で受賞。

※掲載内容は2016年2月時点のものです