ERP Transformation

 

ERPトランスフォーメーションが主導するデジタル化の波

・変化の必要性はあるのか

デジタル技術の革新的な力があらゆる業界に影響を及ぼし、業界の境界線がますます曖昧になっていく。 そんなデジタル化の波が押し寄せています。 企業の経営者はそうした変化を予見し、時流に乗り遅れないよう、早急に適応していく必要性を感じているでしょう。

最近では、従来のビジネスモデルを一変させる企業が次々と現れています。 タクシーサービスが破壊的なロジスティクスサービスに姿を変えたり、ホテル業界がオープンなオンライン市場に参入したりと、いずれの新規プレイヤーにも共通しているのは商品ではなくサービスを提供するという点です。 またこうしたトランスフォーメーション(変革)は、従来、製品を提供することで収益を上げてきた製造業でも見られます。 航空エンジンを例に取ると、エンジンそのものの販売よりも、フライトデータの分析や航空機運用の改善サービスで、より大きな収益を得る企業が現れています。 同様の例は数多くあり、デジタルによる破壊は確実に広がり、ほぼ全ての業界で従来のビジネスモデルを脅かしていることがうかがえます。

こうした状況に対応するために、企業は従来の自社のビジネス分野を越えバリューチェーン全体へと拡大を目指すようになり、「サプライヤー」「卸業者」「小売業者」といった区分けが意味を成さなくなっています。 中でも製造業は急速に変化し、飛躍的に成長しています。 さまざまなデジタル技術の融合で生まれたIoT(Internet of Things)は、コネクテッドカーからスマートシティーまで、あらゆる場面に浸透し、新たな商品やサービス、ビジネスモデルを創出しています。 世界中の商品・サービス市場でIoTの応用が進み、自動運転車や車両の遠隔監視、信頼性の高いヒューマンマシン・インタラクション、システムの安全性向上を目的とした異常事象の自動的な分析、より良い交通管理、製造の精度向上といった、これまでにない革新的な発想が次々と生まれています。

例えば、3Dプリンターの活用が進むことで、消費者一人ひとりに合わせた製品の設計や製造が、メーカーと消費者の協働で行われるようになるでしょう。 またウエアラブル機器は、瞬時にインターネットにアクセスできる強みを活かし、ミリ秒単位で最新情報を確認することを可能にします。 消費者は、価格変更やキャンペーンなどの情報が更新されれば、即座にそれを手にすることができます。 小売業者は、マーケティング情報と消費者の位置情報を組み合わせることで、消費者が今いる場所に合わせたプロモーションを行うことが可能でしょう。

こうした変化を求められる時代において、デジタル技術に基づいた競争力はあらゆる企業に必要で、SAPのようなERPソリューションが力を発揮するのもまさにこの領域です。 SAPはビジネスのシンプル化を後押しし、デジタル時代への対応を可能にします。 デジタル化を検討する企業にとって重要なのは、ソリューションそのものではなく成果でしょう。 そして成果は質の高いサービスでのみ達成可能です。 こうした成果を手にするには、ソフトウエアの導入方法や総所有コスト(TCO)、ハードウエアやソフトウエアの運用をどうするか、デジタル化を支える次世代の機能を活用する方法、といった点を考慮する必要があります。 ここで、こうした背景から誕生したデジタルビジネスを実践するための基幹システム、第4世代のERPといわれるSAP S/4HANAについてご紹介しましょう。


SAP S/4HANAに関するTCSの戦略

SAP S/4HANAは、インメモリープラットフォームSAP HANA上に設計・構築された次世代のビジネススイートで、SAP Fioriと組み合わせることにより、顧客一人ひとりに最適化されたユーザーエクスペリエンスを提供します。 財務やサプライチェーンを管理するコアデジタルプラットフォームとして機能し、SAPデジタルエコシステムの他のソリューションと連携することで、顧客やビジネスパートナー、サプライヤー、社員がリアルタイムで交流したり、資産の管理をしたりすることができます。

SAP S/4HANAは、なぜ企業にとって重要なのか、それにはさまざまな理由があります。 基盤技術であるSAP HANA―ビッグデータに基づく意思決定をリアルタイムにまで高速化するインメモリーデータベースプラットフォーム―を最大のポイントに挙げる人もいれば、「S/」の「S」の部分、シンプル化したアプリケーションでさらなるスピードを追求し、社内の各組織の意思決定が全体で統合されたSAPビジネススイートに価値を見いだす人もいます。 さらに、真のパワーとスピードをエンドユーザーに提供する最新のユーザーエクスペリエンス環境SAP Fioriとの連携を重視する人もいます。

SAP S/4HANAは、その構成機能の部分的な利用でもユーザーに大きな価値を提供するソリューションですが、全ての機能が組み合わさることで真価を発揮し、他のどんな技術や製品にもまねのできない成果をもたらします。 SAPは、SAP S/4HANAについて、「従来型の企業からデジタル企業への移行を支援する最も優れた技術」と胸を張りますが、まさにその言葉の通りだといえます。

クラウドやモバイル、ソーシャルメディア、アナリティクスといったデジタル技術の進歩により、職場環境は大きく様変わりしています。 デジタル技術は、働き方やコミュニケーション、連携の仕方、創造、購買、情報の取り込みなど、あらゆる場面で私たちの行動に大きな変化をもたらしています。 どのように情報を分析し知識として蓄えていくか、社会に参加し、意見を述べるか、成長・前進するか、革新を起こし、問題を解決し、生産性を向上させ、決定を下し、組織が必要とする競争力を手に入れるかが変わりつつあります。 ソーシャルメディアやIoTなど、複数のソースからデータや気付きを得ることができるデジタル時代においては、「顧客を全方位から理解する」という考えが急速に進展し、これまでにないビジネスの機会が生まれつつあります。

俊敏なオペレーションによって競争力を維持したいユーザー企業は、デジタルトランスフォーメーションに乗り出すべきです。 しかし、その一方で日本市場には以下のような特有の課題があります。

  • 多数のアドオン開発がされたレガシーシステム
  • 企業のIT環境内でサイロ化され、地域や事業部ごとに複数存在するシステム

また、それらの課題を乗り越えて変革を決意したユーザー企業は、自社と似た業態や規模の企業における成功事例が特に気になるところでしょう。 SAP S/4HANAが支持されるためには、事例を通じてその優位性とビジネス価値を明確に説明する必要があります。

SAP S/4HANAへの移行には、相応の労力と時間、そしてコストがかかります。 SAPユーザー企業の多くは、今後1年から5年のうちに移行しようと考えているようですが、SAP S/4HANAへのスムーズな移行のためには、タイミングやシステムの種類にかかわらず、スマートなロードマップの策定が重要です。 実績あるタタコンサルタンシーサービシズ(TCS)のロードマップを用いることで、日本市場における特有の課題を乗り越え、大規模で複雑な技術の変革、そしてビジネスプロセスの変革を、幾つかの段階に分けて管理できるようになります。 私たちはまずお客様のビジネス目標を把握し、決められた期間内に確実な移行を達成するために、どんな技術が必要なのかを示すことから始めます。 しかし、TCSが提示するのは技術的な解決方法だけではありません。 TCSではSAP S/4HANAのビジネスケースの作成も支援しています。 これによって、スケジュールのどの時点でどれだけのコストが発生し、システムの実装が進むにつれてどのような財務上、ビジネス上のメリットが得られるのかを確認できます。

・デジタル化からメリットを得るには

デジタル化への道のりは始まったばかりですが、市場ではその勢いを示す数値が現れ始めています。 SAPの発表によると、SAP S/4HANAのサービス開始から11カ月でユーザー企業数は2,700社に上り、研修を受けたパートナー企業は6,700社、販売代理店は1,100社にまで達しました。 TCSもデジタルトランスフォーメーションに足を踏み出したお客様を支援しています。 このデジタル化の波がどれほど広がっているかを実感していただくために、TCSがこれまで世界中で携わった幅広い業界の事例を幾つかご紹介します。

TCSでは最近、大手グローバル企業数社でSAP S/4HANAシステムを稼働させました。 また、日本の大手企業数社で概念実証(Proof of Concept、PoC)を通じたアプローチの検証を支援しています。 さらに、それぞれの地域の特性に合わせたサービスを提供すべく、世界中(日本、米国、フランス、インド、ハンガリー)のSAPイノベーションラボの強化も図っています。 これらのラボでは、お客様に新たなSAPソリューションのメリットを実感していただきながら、段階的なアプローチを通じてビジネスケースの作成ができるようにしています。 日本のイノベーションラボでは、日本のお客様の固有の要件やビジネスプロセスの違いに合わせてソリューションを構築することに注力してきました。

・デジタル化への道のり ―どの道を進むべきか

またTCSは、世界有数のエンタープライズソリューション開発企業の移行プロジェクトに関わっています。 これまでに「サイドカー」方式によるSAP Business SuiteからSAP Business Suite powered by SAPHANAへの移行を完了しており、現在はSAP S/4HANAへの移行を進めています。 各段階において、TCSはお客様のシステムに対する影響を検証し、最善のビジネス効果が得られるよう支援しています。

オーストラリアの大手エネルギー・公益事業会社のプロジェクトでは、初の試みとなるSAP HANAでのスマートメーターアナリティクスを実現し、膨大な量のデータを管理できるようになりました。 これにより、ビジネス予測を目的としたデータアナリティクスが可能となり、ビジネスパフォーマンスの向上にもつながりました。

小売業界では、SAPのオムニチャネルeコマースソリューションであるSAP Hybris Commerceを活用した、グローバル規模のオンラインウェブショップの立ち上げを支援しました。 このシステムは、5,000SKU(Stock Keeping Unit)以上の商品のカタログ管理、価格設定、受注処理、支払いといった重要なビジネスプロセスを支援するだけでなく、ユーザーインターフェース、検索エンジンの最適化、アカウント管理にも対応します。 この企業は、販売プロセスの刷新とコスト削減を実現しただけでなく、売上を伸ばす仕組みも手に入れました。 それまで販売員はまとまった在庫情報を持っていなかったため、購入可能な商品についてお客様に正確な説明をすることができませんでした。 しかし、今ではタブレットアプリを含めたオンラインシステムを使うことで、お客様が必要とする商品を一緒に検索することができます。 また、お客様自身がオンラインシステムで商品を検索・選択し、注文することもできます。 これによりアップセリングやクロスセリングの機会が創出され、同時に顧客満足度も大幅に向上しました。 一連の取引のスピードが上がり、一部のプロセスでは30%のコスト削減を達成しました。 この企業では、2020年末までにオンライン販売が全体の40%を占め、その額は年間約10億ドルに達すると予測されています。

これらの事例に共通するのは、TCSの顧客中心の姿勢です。 お客様の声に耳を傾け、求めるものを理解し、お客様のビジネスモデルがどのように変わるのかを見極め、それに沿った形のイノベーションを提案しています。 デジタル化のプロセスにおいて、お客様が技術の変化に対応し、ビジネス効果を実現することができるよう、TCSは全力でご支援します。




SAP プラクティス グローバルヘッド
Akhilesh Tiwari


1995年TCS入社。
SAPプラクティスのデリバリーおよびプリセールスの共同リーダーを務め、成長戦略の推進に貢献してきた。
21年に及ぶこれまでの在職期間中、さまざまな地域のセールスやデリバリー関連の重責を歴任し、TCSの主要顧客との戦略的関係の構築・強化や、大規模な多国籍チームの立ち上げに中心的な役割を果たしている。
インド工科大学ボンベイ校の修士号を取得。

*掲載内容は2016年11月時点のものです。